福田五人衆の殉教(2
福田には東塚と西塚があり、日勢は東塚に横穴式の石窟があることを知った。
見ると奥行き十数メートルで正面奥は石壁になっている。
意を決した日勢は、唱題に木魚ならぬ石を持て南無妙法蓮華経の七字を刻々と刻み始めた。
そこに、兼て日勢に帰依していた強信心の四人の比丘尼(尼僧)が訪ねて来た。
日勢の背後に正座して一人また一人と唱題に加わったのである。
全身全霊を打込んでお題目を刻む日勢、思いがけない加勢に驚いて振り向き、その姿を見ると頷き微笑まれたという。
しかし、直ぐに向き直って一層力を込めて唱題を続けられたのであった。
やがて、大願成就南無妙法蓮華経と鮮やかに刻み終えられた。
しかし唱題は止むことなく続けられ、四十日の断食にて息を引き取る尼も出てきた。
次第次第に唱題の声も細くなり、五十日を過ぎる頃には一人も日勢と唱和する者もいなくなった。
寺報第253号から転載