矢田部六人衆の処刑(2)
庵に踏み込んできた役人に日閑は『訳を申されよ!』と読経の姿勢のまま聞いた。
『村人を集めて良からぬ説教をしていると聞く。
不受不施は天下のご法度である。
お前の解く説教は不受不施の教えではないかと嫌疑があり、召し取りに参った』
日閑は、いつかこの日が来ると思っていたのか静かにお縄を頂戴した。
日閑を捕らえた一行は庵を後にし、村人たちが田植えの作業をしている姿を横目で見ながら村道を岡山に向かって歩き始めた。
村人の誰かがその光景を遠くから見つけ、何が起きたのか悟った。
『お上人様がひっ捕らえられたぞ!』
と周囲から声があがった。
すると、バタバタと5人ほどが集り、一行の前に立ち塞がったのである。
そして、役人たちの面々を無言で睨みつけた。
その中で長老と思われる男が言った。
『儂らは不受不施の信者だ。
お上人様と共にひっ捕らえよ!』と。
残りの者も皆、異口同音に『儂も不受不施の信者じゃ、引っくくってくれ!』
と両腕を差し出した。
寺報第249号から転載