不受不施の話(61

身池対論(15

 身延方の弁
 身延山は聖地なり、なんぞ無間地獄と謗ずるや。
 身延山は日蓮聖人が晩年過ごされた所であり、聖人のお骨も祀られている。
 聖地であることに誰も異論を挟む余地はない。
 その聖地を「地獄」と謗るとは何たることだ。

 池上方の弁
 知っての通り、折り紙を破り、日蓮聖人の教えに背くゆえにこれを責める。
 さらに、日乾・日遠は共同して「破奥記」を作って世間に広め、不受不施を守る者たちに悪口を言い、これを謗す。
 従って、その結果として身延無間地獄という。
 原因を作ったのは汝にあり。
 不受不施公許の折り紙を無視し、その教えを守らぬ。
 更に日奥を批判する書を作り、不受不施を信奉する者たちを謗っている。
 その行為の結果として身延は地獄に堕ちたと言うのだ。
 身延地獄の原因を作ったのはお前たちだ。

 身延方の弁
 我らはそんな悪口を言ったこともない。
 日奥を批判した書などは知らぬ。
 不受不施の者を謗ったこともない。
 それは作り話だ。

 池上方の弁
 それは事実ではない。
 たぶらかしだ。
 先年、武州川崎いおいて、日遠が直々に日樹に渡した「破奥記」がここにあるのが証拠だ。
 そして、その書「破奥記」を皆の前に差し出したのである。

寺報第215号から転載