不受不施の話(39

千僧供養会が残した傷は余りにも大きかった

 表面上は不受不施義の公許と宗制確立が約束されて宗内は再び平穏に戻った。
 しかし、何分にも千僧供養会の出仕不出仕問題で激しい争いをしたので、両派の和解はそうそう容易なものではなく火種はくすぶっていたようだ。
 その再発火点となったのが、誰あろう養珠院お万とその実兄三浦為春の二人であった。

お万と三浦為春
 二人とも先祖代々、熱烈な法華宗の篤信家名門・三浦氏の血を引く兄妹で、お万は徳川家康の晩年、その寵愛を一身に集めた側室であり、家康との間に第十男紀伊・徳川頼宣そして第十一男水戸・徳川頼房の二人の男子をもうけている。
 テレビでお馴染みの水戸黄門は、お万の孫であり、紀伊家から出て八代将軍を継いだ吉宗はお万の曾孫である。
 お万は女性の身でありながら、身延中興の大檀那として有名でもある。
 一方、兄の為春は対馬流罪に遭った日奥と親交があり、日奥に深く帰依して不受不施義を熱心に信奉する檀那であった。

寺報第192号から転載