いろは歌

 昔、雪山童子(せっせんどうじ)という若者が、鬼から詩の前半分を聞いて感動し、後半部を聞くために、この身を捧げると言いました。
 そして、鬼から後半部を聞くや、それを岩に刻み谷底に身を投じましたが、実は、この鬼の正体は帝釈天(たいしゃくてん)で、途中で救われたということです。
 その詩が、
 諸行無常〔諸行は無常である〕
 是生滅法〔これ生滅の法〕
 生滅滅已〔生滅、滅しおわり〕
 寂滅為楽〔寂滅楽となる〕
というもので、無常偈とか雪山偈とか呼ばれています。
 いろは歌は、この詩をもとにしたもので、
 色はにほへど散りぬるを(諸行無常)
 わが世たれぞ常ならむ(是生滅法)
 有為(うゐ)の奥山けふ越えて(生滅滅已)
 浅き夢みじ酔(ゑ)ひもせず(寂滅為楽)
という具合に対応しています。