「ほとけ」の語源は?

 「仏」というのは、サンスクリット語「ブッダ」の音写語で、「仏陀」(ぶつだ)ともいいます。
 ですから、「仏」は本来「ぶつ」と読んだのですが、いつのまにか我が国では「ほとけ」とも読むようになりました。
 これには、いくつかの語源が考えられています。

 まず第一に、「ブッダ」は「悟った人」のことですが、「さとった」というのは、あらゆる迷い、束縛がなくなった状態、つまり、「ほどけ」た状態のことをいいます。
 この「ほどけ」が「ほとけ」となったという説。

 第二に、仏教がはじめて正式にわが国に伝えられたのは、欽明天皇の時でした。
 その頃に、「ほとりけ」、つまりある種の熱病が全国に流行しましたが、これは、異国の「神」を祭ったことにたいする我が国の神の祟りだといわれました。
 そこで、「ほとけ」は「ほとりけ」の元だということで、やがて「ほとけ」と読まれるようになった、という説。

 第三に、中国では古い時代、「ブッダ」のことを、「浮屠」「浮図」(ふと)と音写することがありました。
 なにか陰惨な感じのする文字ですが、これは中華意識のなせるワザのようです。
 そこで、仏教徒のことも、それに応じて、「浮屠家」(ふとけ)、やがて、ブッダその人も「浮屠家」と呼ぶようになりました。
 これが我が国でなまって「ほとけ」となった説。

 決定的なことはどうも分かっていないようですが、話のスジ道からして、第三の説、「浮屠家」が「ほとけ」になったという説が、いちばんもっともらしい気がします。